「○○さんに聞かないと分からない」は経営課題
中小企業を支援していると、よく耳にする言葉があります。
「この仕事は○○さんしか分からない」
「担当者が休むと対応できない」
「前任者が辞めて、やり方が分からなくなった」
これが「業務の属人化」です。
属人化は、経験豊富な社員がいる証拠でもあります。しかし、その人の頭の中にしか仕事の進め方や判断基準が存在しない状態は、会社にとって大きなリスクです。
人手不足だからこそ属人化を放置できない
人手不足が続く現在、企業は限られた人数で生産性を高めなければなりません。
特に中小企業では、一人が複数の業務を担当することも多く、気づかないうちに知識やノウハウが特定の社員へ集中します。
問題は、その社員が退職、休職、異動したときです。
仕事の進め方が分からない。顧客との経緯が分からない。判断基準が分からない。
こうなると、一人の不在が会社全体の生産性に影響します。
属人化の本当の問題は「優秀な人がいること」ではない
属人化を解消するというと、「誰でもできる簡単な仕事にする」と誤解されることがあります。
そうではありません。
重要なのは、優秀な社員が持っている知識、経験、判断基準を会社の財産として残すことです。
私は業務改善を考える際、
人に仕事を付けるのではなく、仕組みに仕事を付ける
という視点が重要だと考えています。
属人化を解消する5つのステップ
1.業務を可視化する
最初に「誰が、何を、どのように行っているのか」を洗い出します。
業務一覧や簡単なフローを作るだけでも、特定の社員に集中している仕事が見えてきます。
2.属人化している業務を特定する
すべてをマニュアル化する必要はありません。
「担当者が1週間休んだら困る仕事は何か」という視点で優先順位を付けます。
3.判断基準まで言語化する
手順だけでは不十分です。
「なぜこの対応をするのか」「どの場合に上司へ確認するのか」といった判断基準まで残します。
ここが業務標準化の重要なポイントです。
4.複数人で共有できる状態にする
マニュアル、動画、チェックリスト、FAQなどを使い、別の社員でも対応できる状態をつくります。
そして実際に別の社員に仕事をしてもらい、説明不足の部分を改善します。
5.AI・DXで仕組み化する
最後に生成AIやクラウドツールを活用します。
議事録作成、問い合わせ回答案、資料の下書き、社内FAQ、情報検索など、標準化された業務はAIとの相性が良くなります。
AI導入より先に業務を整理する
生成AIを導入すれば、すぐに業務改善できるわけではありません。
仕事の進め方が整理されていない状態でAIを導入すると、非効率な業務をそのままデジタル化してしまう可能性があります。
可視化 → 整理 → 標準化 → 共有 → AI・DX
この順番が重要です。
まとめ
属人化の解消とは、ベテラン社員の価値を下げることではありません。
むしろ、その人が長年培ってきた知識や経験を会社の財産へ変える取り組みです。
そして、優秀な社員を「その人しかできない仕事」から解放できれば、改善、顧客対応、人材育成、新しい事業など、より価値の高い仕事に時間を使えるようになります。
強い会社とは、優秀な一人に依存する会社ではありません。
優秀な人の知識を、組織の力に変えられる会社です。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

