求人を出すだけでは人が集まらない時代
「求人を出しても応募がない」「採用しても、すぐに辞めてしまう」
こうした悩みを抱える中小企業が増えています。
厚生労働省によると、2025年度平均の有効求人倍率は1.20倍でした。前年度より低下したものの、求職者より求人のほうが多い状態は続いています。2026年3月の新規求人倍率も2.15倍であり、求職者が複数の会社を比較できる環境に変わっています。
現在の採用で重要なのは、単に求人を出すことではありません。求職者から「この会社で働きたい」と選ばれる理由をつくることです。
人手不足だけが採用難の原因ではない
採用難の背景には、少子高齢化による労働力人口の構造変化があります。しかし、すべてを人口減少のせいにしてしまうと、企業が改善できる問題を見落としてしまいます。
応募が集まらない会社には、次のような傾向があります。
仕事内容が曖昧、求める人物像が広すぎる、求人票が他社と似ている、ホームページから職場の雰囲気が伝わらない、応募後の連絡が遅いといった問題です。
求職者は給与だけを見ているわけではありません。どのような人と働くのか、何を任されるのか、成長できるのか、自分の生活と両立できるのかを確認しています。
採用の本質は「会社の魅力の言語化」
中小企業には、大企業にはない魅力があります。
経営者との距離が近いこと、仕事の成果が見えやすいこと、幅広い経験ができること、地域や顧客に直接貢献できることなどです。
ところが、その魅力が求人票に書かれていなければ、求職者には伝わりません。
「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」「未経験者歓迎」といった一般的な表現だけでは、他社との違いを示すことは困難です。
誰に、どのような仕事を任せ、どのように成長してもらいたいのか。入社後の1日や1年後の姿まで具体的に伝える必要があります。
採用と定着は一つの経営課題
2025年版中小企業白書では、人材が不足している企業ほど、採用した従業員の定着率が低い傾向が示されています。
これは、採用人数を増やすだけでは人手不足を解決できないことを意味します。
入社後の教育が整っていない、上司によって指示が違う、評価基準が分からない、相談する相手がいない。このような環境では、せっかく採用した人材も定着しません。
採用活動を始める前に、業務マニュアル、教育体制、面談制度、評価の考え方を見直すことが重要です。
経営コンサルタントとして考える採用成功の条件
採用は人事部だけの仕事ではなく、経営戦略の一部です。
まず、今の業務に本当に新しい人材が必要なのかを確認します。重複作業や紙による処理を改善し、AIやデジタルツールを活用すれば、採用人数を抑えられる場合もあります。
そのうえで、正社員、パート、副業人材、外部専門家など、業務に合った人材の関わり方を設計します。
採用すること自体を目的にするのではなく、「会社の目標を実現するために、どのような能力が必要か」から考えることが大切です。
中小企業が取り組むべき7つのこと
第一に、採用する理由と任せる仕事を明確にすること。
第二に、自社が求める人物像を具体化すること。
第三に、社員が感じている会社の魅力と課題を聞くこと。
第四に、仕事内容や職場の雰囲気をホームページやSNSで発信すること。
第五に、応募への返信や面接日程の調整を迅速にすること。
第六に、面接を企業が選ぶ場ではなく、双方が理解し合う場に変えること。
第七に、入社後の教育と定着支援まで設計することです。
AIを使えば、求人原稿の作成、応募者への連絡文、面接質問の整理、採用データの分析などを効率化できます。ただし、会社の魅力や経営者の思いそのものは、AI任せにはできません。
まとめ
中小企業の採用成功法は、条件を良く見せることではありません。
仕事の内容、経営者の考え方、社員の成長、職場の日常を正直に伝え、入社後も約束を守ることです。
採用できない会社から選ばれる会社へ変わるためには、求人広告だけでなく、会社そのものを見直す必要があります。
採用は「空いた席を埋める活動」ではありません。会社の未来を一緒につくる仲間と出会う、重要な経営活動なのです。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

