KPIは、社員を追い込むための数字ではない

経営改善

導入

「売上目標は決めているのに、なかなか達成できない」

こうした悩みを抱える中小企業は少なくありません。その原因の一つは、最終的な売上や利益だけを見て、そこに至るまでの行動を管理していないことにあります。

売上や利益は、さまざまな行動が積み重なった結果です。結果が出てから問題を確認しても、対応が遅れることがあります。

そこで必要になるのが、KPI管理です。

KPIとは何か

KPIは「重要業績評価指標」と訳されます。簡単に言えば、経営目標を達成するために、途中経過として確認する重要な数字です。

例えば、売上を増やすことが最終目標なら、問い合わせ件数、商談件数、成約率、平均単価、リピート率などがKPIの候補になります。

経営計画を現場へ落とし込むためには、各部門の取り組みを具体化し、それを確認するKPIを設定することが重要です。

問題の本質

KPI管理で最も多い失敗は、測定できる数字を片っ端から管理することです。

営業電話数、訪問件数、メール送信数、会議回数など、数字を増やせば管理しているように見えます。しかし、その数字が経営目標とつながっていなければ、社員の入力作業が増えるだけです。

また、KPIを社員の評価や叱責に使うと、現場は数字を良く見せることを優先します。本来の目的である顧客満足や業務改善が後回しになりかねません。

KPIは人を管理する数字ではなく、仕事の流れを改善する数字でなければなりません。

中小企業や経営者への影響

中小企業は、経営者と現場の距離が近い反面、判断が経営者の経験や感覚に集中しやすい傾向があります。

KPIを適切に設定すれば、「最近、営業が弱い気がする」という感覚的な会話を、「問い合わせ数は変わらないが、商談化率が下がっている」という具体的な会話に変えられます。

問題の場所が明確になれば、広告を増やすべきなのか、営業方法を見直すべきなのか、商品説明を改善すべきなのかを判断しやすくなります。

経営コンサルタントとしての考察

KPI管理を始める際に、最初から高度なシステムは必要ありません。

まず経営目標を一つ決め、その目標に影響する行動を分解します。その中から、経営者や現場が改善できる数字を三つ程度選ぶことが現実的です。

例えば売上向上を目指すなら、「問い合わせ件数」「商談化率」「成約率」の三つから始めます。

毎週または毎月、数値の良し悪しだけでなく、「なぜ変化したのか」「次に何を試すのか」を話し合うことが重要です。

企業が今後取り組むべきこと

KPI管理は、次の順番で始めると分かりやすくなります。

第一に、売上、利益、生産性、顧客満足など、改善したい経営目標を一つ決めます。

第二に、その成果が生まれるまでの業務プロセスを分解します。

第三に、現場の行動によって変えられる数字を選びます。

第四に、担当者、集計方法、確認頻度を決めます。

第五に、定期的にKPIそのものを見直します。

AIやデジタルツールは、集計や分析を効率化してくれます。しかし、目的が曖昧なままシステムを導入しても、不要な数字が増えるだけです。

まとめ

KPI管理の目的は、社員に数字を守らせることではありません。

経営目標と日々の行動をつなぎ、問題を早く見つけ、改善を続けることが目的です。

最初から多くの指標を管理する必要はありません。会社にとって重要な目標を一つ選び、成果につながる三つ程度の数字から始める。それが、中小企業にとって無理のないKPI管理の第一歩です。

「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note