導入
経営者に「会社の業績はいかがですか」と質問すると、多くの場合、最初に出てくるのが売上高です。
「今年は1億円を超えそうです」
「前年より20%伸びています」
もちろん売上は重要です。しかし、経営を見るうえで売上と同じくらい、場合によってはそれ以上に確認してほしい数字があります。
それが「粗利益」です。
粗利益を理解すると、「売れているのに利益が残らない」「忙しいのに会社が楽にならない」という問題の原因が見えやすくなります。
粗利益とは
粗利益とは、会計上の「売上総利益」のことで、
粗利益=売上高-売上原価
で計算します。
例えば、100万円の商品を販売するために仕入れや製造原価が70万円かかった場合、粗利益は30万円です。
粗利率は、
粗利率=粗利益÷売上高×100
なので、この場合は30%となります。
売上総利益は、その後の人件費や家賃、広告費、システム費などを支払い、最終的な利益を生み出す源泉となる数字です。
問題の本質は「売上」ではなく「残る利益」
注意したいのは、売上高が増えていても粗利益が増えているとは限らないことです。
例えば、売上を獲得するために大幅な値引きをしたり、原材料価格が上昇しているのに販売価格を据え置いたりすると、売上が伸びても粗利率は低下します。
すると仕事量は増えているのに、会社に残る利益は増えないという状態になります。
私は経営を見るとき、「いくら売ったか」だけではなく、
「その売上からいくら粗利益を生み出したのか」
を見ることが重要だと考えています。
中小企業への影響
現在の中小企業には、人材確保や賃上げ、設備投資、DX、生成AI導入など多くの投資が求められています。
しかし、その資金はどこから生まれるのでしょうか。
基本となるのは、本業から生み出した利益です。
2026年版中小企業白書でも、中規模企業の労働分配率は約7割、小規模企業では約8割とされ、さらなる賃上げ余力には厳しさがあるとされています。
だからこそ、売上だけを増やすのではなく、粗利益そのものを増やす経営が重要になります。
経営コンサルタントとしての考察
粗利益を見るとき、会社全体の数字だけを確認するのでは不十分です。
私がおすすめするのは、
・商品別
・サービス別
・顧客別
・事業別
・営業担当者別
に粗利益を分解することです。
売上の大きな顧客が、必ずしも利益を生んでいる顧客とは限りません。
値引きが多い、特別対応が多い、配送費が高い、工数がかかるといった事情によって、実際には利益を圧迫しているケースもあります。
企業が今後取り組むべきこと
まず毎月、「売上高」「粗利益」「粗利率」の3つを並べて確認してください。
そして粗利率が下がっている場合は、
値引きが増えていないか
仕入価格が上昇していないか
低利益の商品が増えていないか
価格設定は適切か
採算の悪い顧客がないか
を調べます。
粗利益改善は単なるコスト削減ではありません。
価格を上げる、付加価値を高める、高粗利の商品を増やす、仕入条件を改善する、AIやDXによって業務効率を高めるなど、経営全体を見直すことにつながります。
まとめ
会社を強くするために必要なのは、「もっと売ること」だけではありません。
重要なのは、
売上から、どれだけ価値と利益を残せているか。
粗利益は、人材、設備、DX、新規事業、そして会社の未来へ投資するための原資です。
毎月の売上を見るとき、ぜひその横に「粗利益」と「粗利率」を並べてみてください。
そこから、これまで見えていなかった経営課題が見えてくるかもしれません。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

