導入
「この仕事は○○さんに聞かないと分からない」
中小企業の現場では、このような状況が珍しくありません。
担当者が休むと仕事が止まり、新入社員が入るたびに同じ説明を繰り返し、退職時には慌てて引き継ぎ資料を作る。
こうした業務の属人化を改善する方法の一つとして活用できるのがChatGPTです。
ChatGPTを使えば、担当者へのヒアリング内容や既存資料を整理し、社内マニュアルのたたき台を効率的に作ることができます。ファイルをアップロードして内容を整理する利用方法も可能です。
しかし、本当に重要なのは「AIに文章を書かせること」ではありません。
人の頭の中にある仕事を、会社の仕組みに変えることです。
背景
マニュアル作成が進まない最大の理由は、文章を書くのが難しいからではありません。
現場では、
「普段、無意識にやっている」
仕事が非常に多いからです。
ベテラン社員に「作業手順を書いてください」と依頼しても、当然だと思っている作業ほど抜け落ちます。
そこでChatGPTを「質問役」として使います。
例えば、
「新人社員にこの仕事を教える前提で、必要な確認事項を質問してください」
と指示します。
ChatGPTからの質問に担当者が答えていけば、頭の中にある業務を言語化しやすくなります。
問題の本質
ここで重要なのは、現在の仕事をそのままマニュアル化しないことです。
非効率な仕事をそのまま文章にすれば、
「非効率な業務を標準化する」
ことになってしまいます。
マニュアル作成前に、
必要な仕事
不要な仕事
重複している仕事
判断が必要な仕事
自動化できる仕事
を整理する必要があります。
つまり、マニュアル作成は業務改善の絶好の機会なのです。
中小企業や経営者への影響
特に中小企業では、一人の社員が多くの業務を担当します。
そのため知識が個人に集中しやすく、退職・異動・長期休暇が経営リスクになることがあります。
マニュアル化を進めれば、
新人教育の短縮
引き継ぎの効率化
作業品質の標準化
属人化の軽減
業務改善
につながります。
経営コンサルタントとしての考察
私が重要だと考えるのは、
マニュアルを完成させることではなく、更新できる仕組みを作ることです。
分厚いマニュアルを一度作っても、現場が変わればすぐ古くなります。
「仕事が変わったらマニュアルも変える」
という運用まで決めておかなければなりません。
企業が今後取り組むべきこと
ChatGPTを使ったマニュアル作成は、次の5ステップがおすすめです。
① 対象業務を決める
最初から全部作ろうとせず、問い合わせ対応、請求業務、営業事務など、繰り返し発生する仕事から始めます。
② 担当者から業務を聞き出す
作業内容だけでなく、「なぜそうするのか」まで確認します。
③ ChatGPTで構造化する
「目的・準備・手順・注意点・判断基準・チェック項目」の形式に整理します。
④ 現場担当者が確認する
ChatGPTが作った内容をそのまま正式版にせず、実際の担当者が確認します。
⑤ 更新担当者を決める
業務変更時に誰が直すのかまで決めます。
まとめ
ChatGPTによって、マニュアルを作る時間は大幅に短縮できる可能性があります。
しかし、本当の価値はそこではありません。
人の頭の中にあった仕事を見える化し、会社の知識として残すこと。
これこそが、中小企業がChatGPTを活用する大きな意味です。
AIを使って文章を増やすのではなく、
AIを使って「人に依存しない仕組み」を増やす。
その視点から、社内マニュアル作りを始めてみてはいかがでしょうか。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

