生成AIの活用が企業に急速に広がっています。
文章作成、議事録、企画、資料作成、問い合わせ対応、データ整理など、活用できる仕事は増え続けています。
IPAが2026年7月30日に公表した「DX動向2026」でも、企業へのAI導入が急速に広がっていることを背景に、AIの活用実態だけでなく、効果、課題、ガバナンス、組織体制まで調査しています。
しかし、中小企業のAI導入を考えるとき、私は一つ重要なことがあると考えています。
生成AIを導入する前に、まず「仕事」を見直すことです。
AI導入が目的になってはいけない
「ChatGPTを導入したい」
「AIで業務効率化したい」
こうした相談は今後ますます増えるでしょう。
ところが、ここで最初からAIツールを選んでしまうと、本来の目的を見失うことがあります。
たとえば毎週2時間かけて作っている報告書があり、生成AIによって20分で作れるようになったとします。
一見、大きな効率化です。
しかし、その報告書を誰も経営判断に使っていなかったとしたらどうでしょう。
本来考えるべきだったのは、
「どうやって2時間を20分にするか」
ではなく、
「そもそも、この報告書は必要なのか」
という問いです。
ムダな仕事をAI化しても、ムダは残る
AI導入でよく起こる問題は、現在の業務をそのままAI化しようとすることです。
しかし、会社の中には長年の慣習で続いている業務があります。
誰が読むのか分からない資料。
同じ数字を複数の表へ入力する作業。
目的が曖昧な定例会議。
上司の確認だけのために作る報告書。
これらをAIで効率化することはできます。
しかし、より重要なのは「なくせないか」を考えることです。
経済産業省も生成AI活用について、単なる技術導入ではなく「目的志向」のアプローチや、経営層の関与、日常業務への組み込みを重要なポイントとして示しています。
中小企業こそ業務を見直すチャンス
人手不足に悩む中小企業にとって、生成AIは大きな可能性があります。
ただし、人が足りないからといって、今ある業務をすべてAIに置き換えるという考え方では不十分です。
まず仕事を、
「なくす」
「減らす」
「まとめる」
「標準化する」
「AIに任せる」
「人が判断する」
に分けてみることをおすすめします。
特に効果が出やすいのは、文章の下書き、議事録、情報整理、定型的な問い合わせ対応、社内文書検索など、人が繰り返し行っている知的作業です。
AI導入は業務改善プロジェクトである
経営コンサルタントとして私が重要だと考えるのは、生成AI導入をIT部門だけの仕事にしないことです。
AI導入とは、本来、
「会社の仕事のやり方を再設計するプロジェクト」
だからです。
最初に行うべきことは、社員に「何にAIを使いたいか」と聞くことだけではありません。
「毎週繰り返している仕事は何か」
「時間がかかっている仕事は何か」
「本当はやめたい仕事は何か」
「同じ内容を何度も入力していないか」
を確認することです。
そこで初めてAIを使う場所が見えてきます。
もちろん、機密情報や個人情報の取り扱いなど、利用ルールの整備も必要です。IPAの調査でも生成AI利用に関する企業ルールの整備状況にはばらつきがあります。
まとめ
生成AIは非常に強力な道具です。
しかし、道具を入れただけで会社が変わるわけではありません。
これから重要になるのは、
「AIで何ができるか」ではなく、「会社の仕事をどう変えるか」
という視点です。
AI導入の第一歩は、最新ツールを探すことではありません。
まず仕事を並べてみる。
そして、一つひとつ問いかける。
「この仕事は、本当に必要なのか?」
そこから始めることが、AIによる本当の業務改善につながります。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

