「銀行から融資を受けるには、黒字でなければならない」
そのように考えている経営者は少なくありません。しかし実際には、黒字でも融資を断られる会社がある一方で、一時的に赤字でも融資を受けられる会社があります。
銀行が見ているのは、決算書の利益だけではありません。会社が将来にわたって事業を続け、借入金を返済できるかどうかを、さまざまな角度から判断しています。
銀行が融資したくなる会社には、共通する経営姿勢があります。
融資審査を取り巻く背景
近年の金融行政では、不動産担保や経営者保証だけに依存せず、企業の事業内容や将来性を評価する「事業性融資」が重視されています。
銀行にとって融資は、単にお金を貸す取引ではありません。融資先が成長し、継続的に返済を行うことで成り立つ長期的な取引です。
そのため、過去の決算書に加え、現在の経営状況、今後の計画、経営者の能力、資金の使い道などが重視されます。
問題の本質は「赤字か黒字か」だけではない
銀行が最も避けたいのは、赤字そのものではなく、経営者が赤字の原因を理解していない状態です。
例えば、一時的な設備投資や新規事業への先行投資によって赤字になっていても、その理由と改善時期を合理的に説明できれば、融資の可能性は残ります。
反対に、黒字であっても、資金繰り表がなく、売掛金の回収状況も把握できず、借入金の使い道が曖昧な会社は、銀行から慎重に見られます。
大切なのは、経営状態を正しく把握し、自社の言葉で説明できることです。
銀行が融資したくなる会社の7つの共通点
1.試算表を毎月作成している
年に一度の決算書だけでは、現在の経営状況は分かりません。月次試算表を早期に作成し、売上、利益、経費、借入残高を確認している会社は、経営管理能力が高いと評価されます。
2.資金繰り表を作成している
利益が出ていても、手元資金が不足すれば会社は立ち行かなくなります。今後6か月から1年程度の入出金を予測し、資金不足を事前に把握することが重要です。
3.借入金の使い道が明確である
「運転資金が足りない」だけでは、銀行は判断できません。仕入れ、人材採用、設備投資、広告、システム導入など、何にいくら使い、どのような効果を見込むのかを説明する必要があります。
4.返済財源を説明できる
融資の審査で重要なのは、借りられるかではなく、返せるかです。投資によって増える売上や利益、経費削減額などを数字で示す必要があります。
5.悪い情報も早めに伝える
売上減少や取引先の撤退など、都合の悪い情報を隠すと信頼を失います。問題が小さい段階で銀行に相談し、改善策とともに報告する会社のほうが、長期的には支援を受けやすくなります。
6.経営計画と実績を比較している
計画を作るだけでなく、計画と実績の差を確認し、原因を分析していることが重要です。計画未達であっても、改善策を実行していれば、経営者の管理能力を示せます。
7.銀行と日頃から情報共有している
資金が必要になったときだけ銀行を訪問しても、担当者は会社の状況を十分に理解できません。定期的に試算表や事業の進捗を共有し、信頼関係を築いておくことが大切です。
中小企業や経営者への影響
金利や経営環境が変化するなか、今後は融資条件にも企業間の差が生まれやすくなります。
同じ業種、同じ売上規模でも、経営数字を管理している会社と、感覚だけで経営している会社では、銀行の評価が異なります。
資金調達力は、会社の成長力にも直結します。必要なときに設備投資や人材採用ができなければ、事業機会を逃してしまうからです。
経営コンサルタントとしての考察
銀行に提出するためだけに、きれいな事業計画書を作っても十分ではありません。
重要なのは、その計画が日々の経営に使われていることです。
銀行は、完璧な会社を探しているわけではありません。課題を把握し、改善し、約束したことを実行できる会社を探しています。
融資に強い会社とは、銀行との交渉が上手な会社ではなく、経営管理ができている会社なのです。
企業が今後取り組むべきこと
まずは月次試算表、資金繰り表、借入金一覧表の3つを整備しましょう。
そのうえで、今期の見通し、経営課題、改善策、必要資金、返済計画を一つの資料にまとめます。
業績が悪化してから相談するのではなく、資金に余裕がある段階から銀行と情報を共有することも重要です。
銀行との面談は、融資をお願いする場だけではありません。自社の経営状況を客観的に見直す機会として活用できます。
まとめ
銀行が融資したくなるのは、単に利益が出ている会社ではありません。
経営数字を把握し、資金の使い道と返済方法を説明し、問題にも誠実に向き合える会社です。
融資は、突然必要になることがあります。しかし、銀行からの信頼は突然つくることができません。
日頃の経営管理と情報共有の積み重ねが、必要なときに資金を調達できる会社をつくります。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

