「売上は伸びているから、銀行からの評価も悪くないだろう」
そう考えている経営者は少なくありません。しかし、金融機関が決算書を見るとき、確認しているのは売上だけではありません。
銀行が知りたいのは、会社が利益を生み、資金を確保し、将来にわたって借入金を返済できるかどうかです。
では、具体的にどこを見ているのでしょうか。
銀行融資は「過去の数字」だけを見る時代から変化している
日本の金融行政は大きく変化しています。
金融検査マニュアルは2019年に廃止され、2026年5月には「事業性融資の推進等に関する法律」が施行されました。企業の将来性に着目した融資を後押しする「企業価値担保権」も始まっています。
つまり、決算書が重要でなくなったわけではありません。
むしろ、決算書の数字と事業の実態、そして会社の将来を結び付けて説明する力が重要になっているのです。
銀行が決算書で見る7つのポイント
1.売上高と推移
単年度の売上だけでなく、数年間の推移が重要です。
売上が増えているのか、減少しているのか。その原因は何なのか。数字の背景まで説明できることが重要です。
2.営業利益・経常利益
売上が大きくても利益が残らなければ、安定した返済は難しくなります。
特に本業で利益を生み出せているかは、会社の収益力を判断する重要な材料です。
3.現預金
利益が出ていても、現金が不足すれば会社経営は行き詰まります。
月商に対してどの程度の現預金を確保しているかなど、資金余力も重要です。
4.借入金と返済負担
借入金があること自体が悪いわけではありません。
重要なのは、会社の利益やキャッシュフローに対して借入金が過大ではないか、無理なく返済できるかです。
5.純資産・自己資本比率
純資産は、会社がこれまで蓄積してきた財務上の体力を表します。
利益を継続的に残し、自己資本を厚くすることは財務基盤の強化につながります。
6.売掛金・在庫など資産の中身
貸借対照表では金額だけでなく「中身」も重要です。
回収できていない売掛金や長期間動いていない在庫が増えていれば、帳簿上の資産と実際の資産価値に差が生じる可能性があります。
7.キャッシュフローと返済原資
融資で最も重要な視点の一つが「何から返済するのか」です。
会社が事業活動から継続的にキャッシュを生み出せるかどうかが重要になります。
問題は「数字が悪いこと」だけではない
私が経営支援で重要だと考えているのは、数字そのものだけではありません。
「なぜこの数字になったのか」を経営者が説明できるかどうかです。
売上が減少したなら原因は何か。
利益率が低下したなら、どんな改善策を進めているのか。
借入金が増えたなら、その資金を何に投資し、将来どのように回収するのか。
ここまで説明できれば、決算書は単なる過去の成績表ではなく、金融機関と会社の未来について話すための資料になります。
これから経営者が取り組むべきこと
決算期になってから銀行対策を始めるのでは遅すぎます。
月次決算、資金繰り表、予実管理、借入金返済計画などを日頃から整え、自社の財務状態を経営者自身が把握しておくことが重要です。
そして金融機関には、良い情報だけでなく、課題と改善策も含めて定期的に説明する。
これからの資金調達では、この積み重ねが大きな差になります。
まとめ
銀行が見ているのは、決算書に並んだ数字だけではありません。
その数字から、
「この会社は利益を生み出せるのか」
「資金を残せるのか」
「借入金を返済できるのか」
「これから成長できるのか」
を判断しています。
経営者が決算書を理解する最大の目的は、銀行対策ではありません。
自社の現在地を知り、未来の経営判断に生かすことです。
銀行から評価される財務体質をつくることは、結果として「強い会社をつくること」につながっていきます。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

