「売上も伸びている。決算も黒字。それなのに会社にお金がない」
中小企業の経営相談では、このような状況は決して珍しくありません。
会社は利益が出ていれば安全だと思われがちですが、実際には利益と現金は別物です。損益計算書が黒字でも、支払日に必要な現金がなければ事業を続けられません。
これが、いわゆる「黒字倒産」が起こる基本的な仕組みです。
黒字倒産が注目される背景
企業の資金繰りを取り巻く環境は厳しさを増しています。
帝国データバンクによると、2025年度の企業倒産は1万425件で、2年連続で1万件を超えました。物価高や人手不足の影響を受けた倒産も増えています。2026年上半期の物価高倒産も556件となり、半期として過去最多を更新しました。
原材料費、人件費、物流費などが上昇すれば、同じ売上を維持するだけでも以前より多くの資金が必要になります。
中小企業にとって資金繰り管理の重要性は、ますます高まっています。
利益と現金はなぜ一致しないのか
大きな理由の一つが「入金と支払いの時間差」です。
例えば1,000万円を売り上げ、帳簿上200万円の利益が出たとします。
しかし、その1,000万円の入金が3カ月後で、仕入代金や給与を今月支払わなければならないとしたらどうでしょう。
帳簿では利益が出ても、銀行口座の現金は減ります。
さらに、
・売掛金の増加
・在庫の増加
・設備投資
・税金の支払い
・借入金元本の返済
なども現金を減らします。
特に借入金の元本返済は注意が必要です。元本返済は原則として損益計算書上の経費ではありません。しかし現金は確実に会社から出ていきます。
成長企業ほど資金不足になることもある
意外ですが、売上が急増している会社ほど資金繰りに注意が必要です。
売上が増えれば、通常は仕入や外注費も増えます。
その支払いが先に発生し、顧客からの代金回収が後になると、
「売れば売るほど先に現金が必要になる」
という状態が起こります。
成長には運転資金が必要なのです。
売上拡大だけを追い、必要資金を予測していない会社では、好調な受注が逆に資金繰りを圧迫することがあります。
経営者が見るべきなのは6カ月後の預金残高
私は、経営において重要なのは「今月黒字だったか」だけではないと考えています。
見るべきなのは、
「このまま経営を続けたら、3カ月後、6カ月後に現金はいくら残るのか」
です。
そのためには月次の資金繰り表を作り、
売上、入金、仕入、給与、固定費、税金、借入返済、設備投資などを現金の動きとして予測する必要があります。
黒字倒産を防ぐために取り組むこと
まず6カ月程度の資金繰り表を作成しましょう。
そして売掛金の回収期間、在庫水準、支払条件、借入返済予定を確認します。
さらに重要なのが「資金が不足してから銀行に相談しない」ことです。
資金に余裕がある段階から金融機関と情報を共有し、必要であれば運転資金の確保や借入条件の見直しを検討します。
同時に、価格転嫁、粗利益率改善、不採算業務の見直し、在庫削減など、本業そのものの改善も必要です。
まとめ
会社は赤字だから倒産するのではありません。
最終的には「支払う現金がなくなったとき」に経営が止まります。
だからこそ経営者は、
「売上はいくらか」
「利益はいくらか」
だけではなく、
「現金はいくら残るのか」
という第三の視点を持つ必要があります。
利益をつくる経営と、現金を残す経営。
この二つを同時に行うことが、これからの中小企業経営には欠かせません。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

