「うちの社員は、自分で考えて動かない」
経営者や管理職からよく聞く言葉です。
しかし、社員が指示を待つようになった原因を、本人の性格や意欲だけに求めてしまうと、本当の問題を見落とすことがあります。
私は経営改善や組織づくりを考える際、「社員がなぜ動かないのか」ではなく、「この会社では、自分で考えて動ける仕組みになっているか」を見ることが重要だと考えています。
人手不足だからこそ主体性が重要になる
人手不足が進む中、一人の管理職がすべてを判断し、部下に細かな指示を出し続ける経営には限界があります。
さらに生成AIやDXが広がれば、定型的な作業そのものは効率化されていきます。
今後より重要になるのは、
「何が問題なのか」
「何を優先すべきか」
「どの方法を選ぶべきか」
を考えられる人材です。
ところが、会社の日常的なマネジメントが、その思考力を奪っている場合があります。
指示待ち社員を生み出す5つの特徴
1.上司がすぐ答えを教える
部下から質問された瞬間、
「こうすればいい」
「これをやって」
と答えを与えてしまう。
短期的には仕事が速く進みますが、社員には「自分で考える経験」が残りません。
ときには、
「あなたはどうしたらいいと思う?」
と問い返すことも育成です。
2.失敗すると強く責められる
挑戦して失敗した人が責められ、何もしなかった人が問題にならない会社では、社員は安全な行動を選びます。
その結果、
「勝手に判断しない方がいい」
と学習してしまいます。
もちろん同じ失敗を繰り返さない仕組みは必要ですが、挑戦そのものを否定してはいけません。
3.目的や判断基準が共有されていない
「自分で考えろ」と言われても、会社がどこへ向かっているのか分からなければ判断できません。
経営方針、顧客に提供したい価値、優先順位などを共有することが必要です。
主体性とは、好き勝手に行動することではありません。
共通の目的の中で自分なりに判断できる状態をつくることです。
4.プロセスより「正解」だけを評価する
結果だけで評価される組織では、社員は正解を知っている上司に確認するようになります。
「なぜそう考えたのか」
「どんな選択肢を検討したのか」
という思考のプロセスにも目を向ける必要があります。
5.仕事を任せても権限を渡さない
「任せる」と言いながら、細かな部分まですべて上司の承認が必要。
これでは実質的には任せていません。
重要なのは、
「ここまでは自分で判断してよい」
「この金額以上は相談する」
など、判断できる範囲を明確にすることです。
指示待ち問題の本質はマネジメントにある
社員の主体性は、研修を一度行っただけでは育ちません。
仕事の中で、
課題を見つける
↓
考える
↓
選択する
↓
行動する
↓
振り返る
という経験を繰り返すことで少しずつ育っていきます。
経営者や管理職に必要なのは「指示を減らすこと」だけではありません。
判断するための情報と基準を渡し、考える機会をつくることです。
まとめ
「社員が自分で考えてくれない」
そう感じたときこそ、社員を変えようとする前に会社の仕組みを見直してみてください。
答えを教えすぎていないか。
失敗を恐れる職場になっていないか。
目的を共有しているか。
考えた過程を評価しているか。
そして、本当に仕事を任せているか。
自分で考える社員は、偶然には育ちません。
人を変えるより先に、人が考えられる環境をつくる。
それが指示待ち組織から抜け出す第一歩だと考えます。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

