人事評価制度は社員に点数をつける仕組みではない|人が育つ会社の評価制度とは

人材育成・組織改革

導入

人事評価制度という言葉を聞くと、「社員の仕事ぶりを評価して、A・B・Cなどのランクや点数をつける仕組み」を思い浮かべる経営者は少なくありません。

もちろん、昇給や賞与、昇進を決めるためには一定の評価が必要です。

しかし、人事評価制度の目的を「社員を採点すること」だけにしてしまうと、制度は十分に機能しません。

本来の人事評価制度とは、会社が社員に何を期待しているのかを伝え、社員の成長と会社の方向性をつなげる仕組みだからです。

厚生労働省も「職業能力評価基準」を、人事評価だけでなく人材育成や採用などにも活用できるものとして位置づけています。

背景

働き方や求められる能力は大きく変化しています。

AIやデジタル技術の普及によって、単純に「仕事を正確に処理できる人」だけでなく、自分で考える力、改善する力、周囲と協働する力なども重要になっています。IPAが2026年に改訂したデジタルスキル標準でも、AIやデータを活用しながらビジネスを変革するための役割やスキルが整理されています。

だからこそ企業は、「今の成果」だけではなく、「これからどんな能力を伸ばしてほしいのか」を社員へ伝える必要があります。

問題の本質

評価制度がうまくいかない会社では、評価項目から作り始めることがあります。

「責任感5点」
「協調性5点」
「積極性5点」

と項目を並べても、「責任感とは具体的にどんな行動なのか」が決まっていなければ、上司によって判断が変わります。

そして社員には、

「なぜ自分は3点なのか」

が分かりません。

重要なのは点数の細かさではなく、会社が期待する行動を具体化することです。

中小企業や経営者への影響

中小企業では特に、社長の頭の中に評価基準があるケースがあります。

「あの社員は頑張っている」
「もう少し主体性がほしい」

しかし、その基準が社員と共有されていなければ、社員には何を改善すればよいのか分かりません。

評価制度を整えることは、社長の感覚を言語化する作業でもあります。

会社が大切にする価値観や、管理職に求める役割、一般社員に期待する行動を明確にすることで、組織の共通言語ができます。

経営コンサルタントとしての考察

私は、人事評価制度を作るときに最も重要なのは、「誰を何点にするか」ではなく「どんな社員を増やしたいか」を先に決めることだと考えています。

例えば、主体的に考える社員を増やしたいなら、

「主体性」という言葉だけを書くのではありません。

「問題を見つけたら改善案を一つ考えて上司に提案する」

といった行動まで落とします。

そうすれば評価は、社員を裁くための基準ではなく、成長するための道しるべになります。

企業が今後取り組むべきこと

評価制度を整える際は、

経営方針

求める人材像

役職ごとの役割

具体的な行動

評価

面談・育成

という順番で考えることが大切です。

評価面談でも「今回は70点でした」で終わらせず、

「次の半年で何ができるようになれば一段階上なのか」

まで話す必要があります。

まとめ

人事評価制度は、社員に点数をつけるためだけの制度ではありません。

社員に、

「会社は何を大切にしているのか」
「自分には何を期待されているのか」
「次に何を成長させればよいのか」

を伝える仕組みです。

良い人事評価制度とは、過去を採点する制度ではなく、社員と会社の未来をつくる制度。

この視点から評価制度を見直すことが、人が育つ組織づくりの第一歩ではないでしょうか。

「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note