中小企業の経営者からよく聞く悩みの一つが、「管理職が育たない」という問題です。
優秀な社員を課長や部長に昇進させたものの、仕事を部下に任せられない。自分で仕事を抱え込み、チームのマネジメントまで手が回らない。
こうした状況は珍しくありません。
しかし、ここで考えたいのは、本当に本人だけの問題なのかということです。
管理職という肩書を与えただけで、マネジメント能力まで自然に身につくわけではありません。
なぜ今、管理職育成が重要なのか
中小企業では人材不足が続いており、採用だけでなく既存人材の定着や育成が重要になっています。2025年版中小企業白書でも、人材不足への対応では人材の確保・定着に加え、企業の成長を支える経営人材の確保・育成が重要だと示されています。
会社が小さいうちは社長が直接社員に指示できます。
しかし、社員数が増えれば、すべてを社長一人で管理することはできません。
そこで必要になるのが管理職です。
問題は「能力」より「育成の仕組み」にある
よくあるのが、
「営業成績が良いから営業課長にする」
という人事です。
もちろん本人の実績は大切です。
しかし、自分で成果を出す能力と、部下を通じて成果を出す能力は違います。
プレイヤーの仕事は「自分が成果を出すこと」。
管理職の仕事は、
「チームが成果を出せる状態をつくること」
です。
この仕事の変化を会社側が説明しないまま昇進させれば、新任管理職は以前と同じように自分で仕事を抱えるようになります。
管理職を育てる5つのステップ
1.役割を明確にする
まず、「管理職とは何をする人なのか」を明確にします。
売上管理、部下育成、業務改善、情報共有、目標管理など、何を期待しているのかを言葉にすることが出発点です。
2.判断基準と権限を渡す
責任だけ与えて権限を渡さなければ、管理職は機能しません。
「どこまで自分で決めてよいのか」を明確にします。
3.小さなマネジメント経験を積ませる
いきなり大人数を任せる必要はありません。
会議の進行、後輩指導、小規模プロジェクトなどから経験させます。
4.定期的にフィードバックする
任せっぱなしでは育ちません。
「どんな判断をしたか」「なぜそう考えたか」を上司や経営者と振り返る場をつくります。
5.次のリーダーを育ててもらう
管理職育成の最終段階は、自分が成果を出すことではありません。
自分の部下から次の管理職候補を育てられる状態です。
経営コンサルタントとして感じること
私が企業支援の現場で感じるのは、「管理職が育たない」という問題の裏側に、社長が権限を手放せない問題が隠れているケースが少なくないということです。
管理職育成とは、社員だけを変える取り組みではありません。
経営者自身が、
「自分で判断する経営」
から
「人に判断してもらえる仕組みをつくる経営」
へ変わることでもあります。
まとめ
管理職は、辞令によって生まれるものではありません。
役割を理解し、判断し、失敗し、振り返り、再び挑戦する。その経験の積み重ねによって育ちます。
管理職が育つ会社は、社長一人の能力だけに依存しません。
だからこそ、管理職育成は単なる人材教育ではなく、会社を次の成長段階へ進めるための経営戦略なのです。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

