自分で考える社員は偶然には育たない|主体性を育てる組織づくり

人材育成・組織改革

導入

「社員が指示されたことしかやらない」

「もう少し自分で考えて動いてほしい」

中小企業の経営者から、こうした相談を受けることがあります。

そこで、「最近の若い社員は主体性がない」「本人の意識を変えなければならない」と考えてしまうケースがあります。

しかし、経営改善の現場を見ていると、私は少し違う見方をしています。

社員の主体性は、本人の性格だけで決まるものではありません。組織の仕組みによって大きく変わります。

背景

日本企業では人手不足感が高い状態が続いています。人口減少が進む中、企業には人材確保だけでなく、労働生産性を高め、一人ひとりが能力を発揮できる環境を整えることが求められています。

さらにAIやDXの普及によって、仕事のあり方も変わっています。

決められた作業を正確に繰り返すだけではなく、「何が問題なのか」「どう改善できるのか」を社員自身が考える重要性は、今後さらに高まるでしょう。IPAもDX人材について、技術だけではなく人材育成や企業文化・風土を重要な論点として扱っています。

問題の本質

社員が考えなくなる会社には、一つの特徴があります。

上司が答えを出しすぎることです。

社員が相談に来る。

上司がすぐ答える。

社員はその通り動く。

短期的には効率的です。しかし、それを繰り返すと社員は、「困ったら上司に聞けばいい」と学習します。

さらに、失敗すると強く責められる一方、挑戦しても評価されない会社では、社員にとって最も合理的な行動は「余計なことをしない」になります。

これでは「主体的に動け」と言っても矛盾しています。

中小企業や経営者への影響

指示待ち組織で最も忙しくなるのは社長と管理職です。

あらゆる判断が上に集まり、社長が、

「これはどうしますか?」
「確認してください」
「判断をお願いします」

と聞かれ続けます。

会社が10人、20人、30人と成長すると、この構造はいずれ限界を迎えます。

社長自身が会社のボトルネックになってしまうからです。

経営コンサルタントとしての考察

私が重要だと考えるのは、

「主体性のある人を採用する」より、「主体性が育つ会社をつくる」ことです。

その第一歩は、上司が答えを教えることを減らすことです。

例えば、

「どうしたらいいですか?」

と聞かれたとき、

「あなたはどう思う?」

と返してみる。

さらに、

「選択肢を3つ出すとしたら?」
「それぞれのメリット・デメリットは?」
「あなたならどれを選ぶ?」

と問いかけます。

上司の役割を「答える人」から「考えさせる人」に変えるのです。

企業が今後取り組むべきこと

主体性を育てるには、次の5つが重要です。

  1. 仕事の目的を伝える
    「何をするか」だけでなく、「なぜするのか」を共有する。
  2. 判断できる範囲を明確にする
    すべて上司承認では主体性は育ちません。
  3. 答えではなく質問を返す
    社員に考える習慣をつくります。
  4. 小さな失敗を許容する
    挑戦できる範囲を決め、経験から学ばせます。
  5. 結果だけでなく改善や挑戦も評価する
    評価制度と会社が求める行動を一致させます。

まとめ

社員の主体性は、

「もっと自分で考えろ」

と言っただけでは生まれません。

任せる。考えさせる。失敗から学ばせる。そして振り返る。

その積み重ねによって育ちます。

自分で考える社員は偶然には育ちません。自分で考えられる組織を、会社側が意図的につくる必要があるのです。

「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note