導入
社員とのコミュニケーションを増やすために、1on1ミーティングを導入する企業が増えています。
しかし、「毎月実施しているのに社員が本音を話さない」「業務報告だけで終わる」「何を話せばよいか分からない」という声も少なくありません。
1on1は、実施すれば自動的に組織が良くなる制度ではありません。
重要なのは、何のために話すのかです。
1on1が必要とされる背景
1on1とは、上司と部下が定期的に1対1で行う対話です。一般的な評価面談とは異なり、部下の成長支援を中心として行われます。
2025年のパーソル総合研究所の調査では、直近半年に1on1を経験した部下は55.7%でした。一方、満足している部下は約半数にとどまります。
つまり、これから企業が考えるべきなのは「導入するか」ではなく「どう機能させるか」です。
問題の本質は「上司が話しすぎること」
1on1が失敗する代表例が、通常の業務会議と同じになってしまうことです。
「売上はどうなっている?」
「この仕事はいつ終わる?」
「もっとこうしたほうがいい」
これでは部下のための時間ではなく、上司が情報収集や指示をする時間です。
1on1では、上司が答えを与えることよりも、社員自身に考えてもらうことが重要です。
「今、一番困っていることは何ですか?」
「自分では原因をどう考えていますか?」
「どうなれば理想ですか?」
「そのために何から始めますか?」
こうした問いによって思考を引き出します。
中小企業にこそ1on1が必要な理由
中小企業では、経営者や管理職と社員の距離が近いため、「普段から話しているから大丈夫」と考えがちです。
しかし、日常会話の多くは仕事の指示や確認です。
社員が何に悩み、どんな仕事に挑戦したいのか、会社について何を感じているのかまで聞く機会は意外にありません。
だからこそ、意識的に対話の時間をつくる意味があります。
成功させる7つのポイント
第一に、目的を「評価」ではなく「成長支援」と明確にすること。
第二に、上司より社員が話す時間を増やすこと。
第三に、すぐアドバイスせず質問すること。
第四に、業務だけでなく成長やキャリアも話すこと。
第五に、話した内容を安易に評価へ結び付けないこと。
第六に、最後に「次に何をするか」を社員自身に決めてもらうこと。
そして第七に、単発で終わらせず継続することです。
経営コンサルタントとしての考察
私は、1on1の本当の価値は「社員の問題を上司が解決すること」ではないと考えています。
むしろ、社員が自分で問題を整理し、自分で次の行動を決められるようになることにあります。
毎回上司が答えを教えていれば、社員はいつまでも上司の判断を待ちます。
反対に、問いかけを通して考える習慣をつくれば、少しずつ自分で判断できる社員が育っていきます。
企業が今後取り組むべきこと
1on1を制度化するときは、回数だけをルールにしてはいけません。
目的、基本的な質問、記録する内容、管理職への研修までセットで設計する必要があります。
特に管理職には「話す力」以上に「聞く力」「質問する力」が必要です。
まとめ
1on1は社員を管理するための時間ではありません。
社員が自分の仕事を振り返り、自分の考えを言葉にし、次の行動を決めるための時間です。
良い1on1が積み重なれば、社員との関係だけでなく、会社の意思決定や組織の動き方まで変わっていきます。
会社を変える最初の一歩は、上司が「何を話すか」ではなく、社員に何を考えてもらうかから始まるのではないでしょうか。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

