「営業成績が一番だから営業課長にしよう」
「技術力が高いから現場の責任者を任せよう」
中小企業では、このような形で管理職が決まることが少なくありません。
もちろん、現場で実績を上げてきたことは重要です。しかし、ここには一つ大きな落とし穴があります。
優秀な社員と、優秀な管理職に必要な能力は同じではありません。
自分で成果を出す仕事から、人を通じて成果を出す仕事へ変わるからです。
プレイヤーと管理職では「成果の出し方」が違う
優秀なプレイヤーは、自分で考え、自分で動き、自分で結果を出します。
一方、管理職には、
・仕事を任せる
・部下を育てる
・目標を設定する
・進捗を確認する
・問題を解決する
・経営方針を現場へ伝える
といった役割があります。
つまり、自分自身の能力だけではなく、チーム全体の力を引き出す能力が求められます。
ところが会社側がこの違いを説明せず、「今日から課長だからよろしく」と肩書だけを与えるケースがあります。
これが最初の失敗です。
失敗する会社に共通する5つの問題
第一は、実績だけで管理職を選ぶことです。
売上が高い、仕事が速い、技術力がある。それらは重要ですが、人を育てる能力とは別です。
第二は、管理職の役割を教えていないこと。
本人は昨日までと同じように、自分で成果を出そうとしてしまいます。
第三は、プレイヤー業務を減らさないことです。
部下の管理を任せながら、以前と同じ個人目標も要求すれば、管理職は仕事を抱え込むようになります。
第四は、部下への任せ方を教えていないこと。
優秀な人ほど「自分でやった方が早い」と感じやすく、結果として部下の成長機会を奪ってしまいます。
第五は、昇進後のフォローがないことです。
管理職は任命した瞬間に完成するものではありません。
中小企業では一人の管理職の影響が大きい
大企業以上に、中小企業では一人の管理職が組織へ与える影響が大きくなります。
10人の部署であれば、管理職一人のマネジメントによって、残り9人の働き方が変わる可能性があります。
管理職が仕事を抱え込めば部下は育たず、すべての判断が管理職へ集中します。
そして管理職自身も疲弊する。
会社としては「優秀な社員を昇進させた」はずなのに、結果として優秀なプレイヤーまで失ってしまうことがあります。
管理職への昇進は「ご褒美」ではない
経営支援の現場で重要だと感じるのは、管理職への昇進を過去の実績に対するご褒美にしないことです。
管理職になることは、単に役職が上がることではありません。
仕事そのものが変わることです。
自分が100点を取るのではなく、チームの一人ひとりが70点、80点、90点と成長できる環境をつくる。
そこに管理職の価値があります。
会社が取り組むべきこと
管理職候補を決める前に、「何を任せる役職なのか」を明確にすることから始めるべきです。
そのうえで、
役割を伝える
↓
小さなチームを任せる
↓
判断を経験させる
↓
上司と振り返る
↓
部下育成を任せる
という段階を踏んで育てます。
研修だけで管理職を育てるのではなく、実務と振り返りを繰り返すことが重要です。
まとめ
優秀な社員を管理職にすることが問題なのではありません。
問題なのは、
「優秀だから管理職もできるだろう」と考え、準備も育成もなく昇進させることです。
プレイヤーとしての成功と、管理職としての成功は別のものです。
会社が成長するためには、「誰を管理職にするか」だけでなく、「管理職になった人をどう育てるか」までを経営課題として考える必要があります。
人を育てられる管理職が増えれば、その管理職が次の人材を育てます。
管理職育成とは、一人の社員を育てることではありません。
会社が自分たちで人を育て続けられる仕組みをつくることなのです。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

