「社長の右腕が欲しい」
企業経営者から相談を受けていると、よく聞く言葉です。
しかし、ここで一つ考えなければならないことがあります。
右腕とは、単に仕事ができる社員なのでしょうか。
私はそうではないと考えています。
社長の右腕とは、社長の考えを理解し、それを経営の仕組みや社員の行動へ変えられる人です。
中小企業ほど右腕人材が必要になる
人材不足が続く中、中小企業では現場だけでなく、経営を担う中核人材の確保・育成も重要な課題です。中小企業庁でも、中核人材の不足や人材戦略の重要性が取り上げられています。
さらに現在は、売上、採用、資金繰り、人材育成、DX、生成AI、業務改善など、経営者が考えるテーマが増えています。
これらをすべて社長一人で抱える経営には限界があります。
そこで重要になるのが「社長の右腕」です。
ただし、最も仕事ができる社員を昇進させれば右腕になるわけではありません。
右腕に必要な5つの能力
1.社長の考えを整理する力
右腕は、単なるイエスマンではありません。
社長の考えを聞き、「なぜそれをするのか」「優先順位は何か」「どこにリスクがあるのか」を整理する必要があります。
場合によっては、社長とは違う意見を伝えることも重要です。
2.戦略を実行に変える力
経営方針を聞いて終わるのではなく、
「誰が、何を、いつまでに行うのか」
まで具体化する力が必要です。
目標をKPIや業務、会議、担当者の行動へ落とし込んで初めて戦略は実行されます。
3.数字を見る力
右腕には財務やKPIを見る力も欠かせません。
売上だけではなく、粗利益、利益率、キャッシュフロー、生産性などから会社の状態を把握し、感覚だけではなく数字をもとに経営判断を支える必要があります。
4.人と組織を動かす力
社長が方向を示しても、社員が動かなければ会社は変わりません。
右腕には、経営者と社員、営業と現場、経営と管理部門などをつなぎ、異なる立場の人を調整する力が求められます。
「自分でできる」より、「人を動かせる」ことが重要です。
5.会社を変える力
これから特に重要になる能力です。
2026年には中小企業向けの支援制度も「デジタル化・AI導入補助金」へ名称変更されるなど、生産性向上とAI・DX活用がより重視されています。
しかし、ツールを導入するだけでは会社は変わりません。
業務を見直し、不要な仕事を減らし、AIに任せる仕事と人が担う仕事を再設計する。
こうした変革を進められることも、これからの右腕には必要です。
社長の右腕は「社長のコピー」ではない
右腕を育てる際に注意したいのは、社長と同じタイプの人材を探さないことです。
営業に強い社長なら、数字や組織に強い右腕。
アイデア型の社長なら、実行管理に強い右腕。
慎重な社長なら、変化を推進できる右腕。
むしろ、社長に足りない能力を補完する人の方が会社は強くなります。
企業が今から取り組むべきこと
重要なのは「良い人がいたら右腕にしよう」と考えないことです。
まず社長が抱えている仕事を書き出してください。
その中から、
「社長しかできない仕事」
と
「本来は誰かに任せるべき仕事」
を分けます。
そして権限、責任、数字、情報を少しずつ渡していきます。
右腕は肩書を与えた瞬間に生まれるものではありません。
経営に参加する機会を与えることで育っていきます。
まとめ
これからの中小企業に必要なのは、「何でもできる社長」ではありません。
社長が一人で頑張らなくても動く会社です。
そのためには、
社長の考えを整理する力。
戦略を実行する力。
数字を見る力。
人と組織を動かす力。
会社を変える力。
この5つを持つ右腕人材を育てる必要があります。
会社の成長限界は、社長個人の能力だけで決まるのではありません。
社長の隣に、経営を一緒に背負える人がいるか。
それが、会社が次のステージへ進めるかどうかを左右する重要なポイントだと考えています。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

