黒字だから会社は安全、とは限らない
「今期は利益が出ているから大丈夫」
経営者であれば、決算書の黒字を見て安心した経験があるかもしれません。
しかし、会社経営では利益が出ていることと、会社に現金があることは別問題です。
帳簿上では利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な現金を用意できなくなれば、会社は事業を継続できません。
これが一般に「黒字倒産」と呼ばれる状態です。
企業倒産は再び高い水準に
現在、この問題を改めて考える必要があります。
帝国データバンクによると、2026年7月の企業倒産は1,037件となり、2カ月連続で1,000件を超えました。物価高倒産も121件と過去最多を更新しています。
東京商工リサーチの集計でも、2026年7月は負債1億円未満の倒産が全体の77.3%を占めています。
原材料費、人件費、物流費などの上昇により、利益だけでなく資金繰りを管理する重要性が高まっています。
利益と現金はなぜ違うのか
たとえば、100万円の商品を販売したとします。
会計上は売上が計上され、原価などを差し引けば利益が発生します。
しかし、取引先から実際に100万円が入金されるのが3カ月後なら、その100万円はまだ会社の銀行口座にはありません。
その間にも、
・給与
・仕入代金
・家賃
・外注費
・税金
・社会保険料
・借入金返済
などの支払いは発生します。
利益はある。しかし現金がない。
ここに黒字倒産が起きる基本的な構造があります。
売上が伸びている会社ほど注意が必要
意外に思われるかもしれませんが、急成長している会社も資金繰りには注意が必要です。
売上が増えれば、仕入れや人員、設備、在庫などを先に増やさなければならないケースがあります。
ところが売上代金の回収は数カ月後。
すると、成長すればするほど先行して必要になる資金も増えていきます。
「売上が増えた=会社のお金が増えた」ではないのです。
経営者が見るべきなのは未来の現金
経営支援の立場から重要だと考えているのは、預金残高だけを見るのではなく、3カ月後、6カ月後の現金を予測することです。
そのために必要なのが資金繰り表です。
最低でも、
「現在の現預金はいくらか」
「いつ売掛金が入金されるか」
「いつ大きな支払いがあるか」
「借入金を毎月いくら返済するか」
「税金や賞与をいつ支払うか」
を把握しておく必要があります。
黒字倒産を防ぐ5つのポイント
企業が取り組むべきことは、決して複雑ではありません。
第一に、月次で資金繰り表を作ること。
第二に、売掛金の回収期間を確認すること。
第三に、過剰在庫を減らすこと。
第四に、設備投資や大きな支出の前に資金計画を作ること。
第五に、資金が苦しくなってからではなく、余裕がある段階で金融機関と相談することです。
まとめ
会社経営で本当に怖いのは、「赤字」だけではありません。
利益が出ていることで安心し、資金繰りの悪化に気づかないことも大きなリスクです。
損益計算書は会社が「儲かっているか」を教えてくれます。
一方、資金繰り表は会社が「生き続けられるか」を教えてくれます。
経営者が見るべきなのは、今日の利益だけではありません。
3カ月後、6カ月後にも会社に現金が残っているか。
この視点を持つことが、黒字倒産を防ぐ第一歩になります。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

