「会社には、いくら現金を残しておけばいいのでしょうか?」
経営者から資金繰りについて相談を受ける際、非常に重要になる質問です。
売上や利益については毎月確認していても、「会社に必要な現金はいくらなのか」まで明確に把握している企業は、意外と多くありません。
会社経営では、利益を出すことと同じくらい、事業を継続できるだけの現金を確保することが重要です。
運転資金とは何か
運転資金とは、会社が日々の事業を継続するために必要なお金です。
会社では毎月、給与、家賃、仕入代金、外注費、水道光熱費、社会保険料、税金、借入金の返済など、さまざまな支払いが発生します。
問題は、売上が発生した瞬間に現金が入ってくるとは限らないことです。
たとえば商品を100万円販売しても、代金が2カ月後に入金されるのであれば、それまでの給与や仕入代金などは会社が先に負担しなければなりません。
この時間差を支えるのが運転資金です。
「利益がある=現金がある」ではない
経営で注意したいのが、利益と現金を同じものとして考えてしまうことです。
売上が伸びれば、売掛金や在庫も増えることがあります。
すると、決算書上では利益が出ているにもかかわらず、会社の預金残高が減っていくことがあります。
成長している会社ほど運転資金が必要になるケースも珍しくありません。
「売上が伸びているから大丈夫」ではなく、売上の成長に合わせて必要な現金がどの程度増えるのかを見る必要があります。
会社はいくら現金を持つべきか
必要な現金に、すべての会社に共通する正解はありません。
一つの目安として考えたいのが、毎月出ていく固定的な支出の3〜6カ月分です。
たとえば、人件費や家賃、外注費、返済などを含めて毎月500万円の資金流出がある会社なら、1,500万〜3,000万円程度の資金余力を一つの基準として検討できます。
ただし、これはあくまで目安です。
入金までの期間が長い会社、在庫を多く持つ会社、売上の季節変動が大きい会社では、さらに余裕が必要になる場合があります。
反対に、現金商売など入金が早い事業では必要額が変わります。
大切なのは「預金残高」ではなく「何カ月持つか」
私が資金戦略を考えるうえで重要だと考えているのは、預金残高そのものよりも、
「売上が突然減ったとしても、この会社は何カ月事業を継続できるのか」
という視点です。
預金が3,000万円あっても、毎月1,000万円出ていく会社と300万円出ていく会社では、安全性がまったく違います。
現金は金額だけで判断するのではなく、「会社を動かせる期間」に置き換えて考えることが重要です。
経営者が今から取り組むべきこと
まず、毎月必ず出ていくお金を整理してください。
次に、売上がいつ現金として入ってくるのか、借入返済や税金などがいつ発生するのかを確認します。
そして3カ月後、6カ月後の預金残高を予測します。
そのために有効なのが資金繰り表です。
資金不足が発生してから銀行へ相談するのではなく、余裕がある段階で資金調達を検討することも重要な経営判断です。
まとめ
運転資金は、会社が事業を続けるための「体力」です。
利益を増やすことはもちろん重要です。しかし、会社を守る最後の砦は現金です。
経営者が見るべきなのは、
「今いくらあるか」だけではありません。
「この現金で、会社をあと何カ月動かせるのか」
ここまで把握できるようになると、資金繰りは単なるお金の管理から、未来を考えるための経営管理へ変わっていきます。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

