「会社の借入金はいくらまでなら安全ですか?」
経営者からよく聞かれる質問の一つです。
年商1億円なら3,000万円なのか、5,000万円なのか。それとも1億円まで借りても問題ないのか。
しかし、借入金の安全性を金額だけで判断することはできません。
重要なのは、**「いくら借りているか」ではなく「その会社に返せる力があるか」**です。
借入金が多い=危険とは限らない
例えば、同じ5,000万円の借入金がある2社を考えてみます。
A社は毎年安定して利益とキャッシュを生み出し、十分な現預金を持っています。
一方、B社は利益がほとんどなく、毎月の返済によって資金繰りが厳しくなっています。
借入金額は同じでも、財務上の安全性はまったく違います。
だからこそ、借入金は残高だけで判断してはいけません。
問題の本質は「返済能力」
経営者がまず確認したいのが、会社が事業によってどれだけ返済原資を生み出せるかです。
一つの考え方として、
簡易キャッシュフロー=税引後利益+減価償却費
があります。
例えば年間の簡易キャッシュフローが1,000万円あり、年間元金返済額が600万円なら、一定の返済余力があります。
反対に、年間300万円しか生み出せないのに600万円を返済している状態なら、その差額を過去の預金などで補わなければなりません。
この状態が続けば、黒字でも資金繰りが苦しくなる可能性があります。
経営者が見るべき5つのポイント
借入金の安全性を考える際には、少なくとも次の5点を確認します。
1.年間の返済原資
利益だけではなく、実際に返済へ回せる資金を確認します。
2.年間元金返済額
毎月の返済額を12か月分で把握し、返済原資とのバランスを見ます。
3.現預金残高
利益が出ていても現金がなければ会社は支払いを続けられません。
4.借入金の使い道
赤字補填のための借入と、将来利益を生み出す設備投資では意味が違います。
5.今後のキャッシュフロー
現在返済できるだけでは不十分です。6か月後、1年後まで資金繰りを予測する必要があります。
「借りられる金額」と「返せる金額」は違う
経営支援の現場で重要だと感じるのは、銀行から融資を受けられるからといって、その金額が必ずしも会社にとって安全とは限らないということです。
一方で、借入金を必要以上に怖がる必要もありません。
設備投資、人材採用、DX、AI導入、新規事業など、将来の利益を生み出すために資金が必要になることがあります。
借入は使い方次第で、会社を成長させるための重要な経営手段になります。
今後取り組むべきこと
経営者におすすめしたいのは、「借入残高」だけを見る経営から、「返済能力」を見る経営への転換です。
月次決算、資金繰り表、借入金一覧表を整備し、少なくとも毎月、
「今いくらあるのか」
「今後いくら入ってくるのか」
「いくら返済するのか」
「半年後に現金はいくら残るのか」
を確認します。
まとめ
安全な借入額に、すべての会社に共通する一つの答えはありません。
売上規模だけではなく、利益、キャッシュフロー、現預金、返済額、資金使途、将来の事業計画まで含めて判断する必要があります。
経営者が本当に見るべきなのは借入金の「大きさ」ではありません。
その借入金を事業から生み出すキャッシュで返していけるのか。
ここを把握することが、会社の財務を強くする第一歩です。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

