「次の部長候補がいない」「管理職に昇進させても部下を育てられない」。
中小企業の経営者から、こうした相談を受けることがあります。
しかし、管理職が育たない原因を「本人の能力不足」だけで考えてしまうと、本当の問題を見落とします。
厚生労働省の令和6年度「能力開発基本調査」では、人材育成について何らかの問題がある事業所は79.9%に上っています。また2025年に紹介された企業調査でも、「管理職になりたい中堅社員が少ない」「上長の育成力が不足している」「候補者が育っていない」「育成時間がない」といった課題が挙げられています。
管理職不足が経営課題になる理由
人手不足が進む中、企業は管理職も簡単には外部採用できなくなっています。
厚生労働省の「令和7年版 労働経済の分析」でも、人手不足は現場職だけではなく、マネジメント層にも及んでいることが示されています。
だからこそ今後は、「必要になったら管理職を探す」のではなく、「社内で継続的に管理職を育てる」経営が必要になります。
管理職が育たない会社に共通する7つの問題
第一は、プレイヤーとして優秀な人を、そのまま管理職にしていることです。
営業成績が高いことと、部下を育成できることは別の能力です。
第二は、管理職の役割が曖昧なことです。「自分も売上を上げながら、部下も育てて、会議にも出て」と仕事だけが増えているケースがあります。
第三は、権限を与えていないことです。何を決めるにも社長の承認が必要では、管理職は判断力を身につけられません。
第四は、管理職になる前の経験が不足していること。小さなプロジェクトや会議運営、後輩指導などを経験させることが重要です。
第五は、育成方法を管理職本人に任せていることです。
第六は、管理職を評価する基準が「自分の売上や成果」に偏っていること。
第七は、社長自身が現場の判断を手放していないことです。
問題の本質は「人」より「仕組み」
私が経営改善の現場で重要だと考えているのは、管理職育成を個人の努力に任せないことです。
管理職には、業務管理、問題解決、部下育成、目標設定、会議運営、意思決定など、それまでとは異なる能力が求められます。
ところが、多くの企業では十分な準備をしないまま昇進させています。
これでは本人が苦しくなるのも当然です。
中小企業が取り組むべきこと
まず、管理職の役割を文章にしてください。
次に、管理職候補を早めに選び、小さなマネジメント経験を積ませます。
さらに、1on1、目標設定、KPI管理、会議運営、フィードバックなど、管理職として必要な基本動作を標準化します。
そして重要なのが、管理職自身の仕事を減らすことです。
生成AIやDX、業務改善によって資料作成や集計、報告業務を減らし、「人を見る時間」を確保する必要があります。
まとめ
管理職が育たない会社には、人材がいないのではなく、管理職が育つまでの道筋がない場合があります。
管理職は任命した日に完成するものではありません。
経営者がつくるべきなのは、「優秀な人材を探す仕組み」だけではなく、「普通の社員が経験を積み、管理職へ成長していける仕組み」です。
管理職育成は、人事施策ではありません。
会社を社長一人で動かす経営から、組織で動かす経営へ変えるための重要な経営戦略なのです。
「日々の経営・社会ニュースについての発信はこちら」として、伊藤 弘典|note

